2019年10月30日発売されました「ラジオな曲たちⅡ」のライター松木直也さんが当時書いてくださった「ちょっと裏話」を公開♫選曲の分析もレポートしてくれました
『ラジオな曲たちⅡ』のちょっと裏話 ライター 松木直也
かれこれ7年前になる2013年4月28日、今では名物企画となった〈レディオソロイズム〉がスタートした。これは、大阪のラジオ局FM COCOLO(76.5MHz)で、南佳孝がパーソナリティを担当する番組の『NIGHT AND DAY』内で、本人が毎回1曲カヴァー曲を歌うコーナーだ。(毎週水曜日夜9時から10時に放送)
これがきっかけでアルバム『ラジオな曲たち~NIGHT AND DAY~』(’16年3月)がリリースされ、こちらは第2弾となるのだが〈レディオソロイズム〉では選曲ばかりではなく、アレンジしてサウンドをつくるまで全てに携わり、驚くことに、この時点で歌った曲がすでに200を越えていた。さて、本人はどのような思いでいるのだろう?
「洋楽ばかりだと日本語の曲やってないよな、こんな好きな曲もあったな、あれも歌いたいとスタートした頃は思いつくままに自分勝手にやっていたんだけど、リスナーの年齢ゾーンは50代がメインなので、どのへんがストライクなんだろうか?とよく考えるようになったね。
また、放送時間が夜。夜のラジオは独特の静けさやパーソナルな存在感があるので『ウイスキーがお好きでしょう』みたいに日本語の方がしみるんじゃないかとか、最近は聴き手のシチュエーションや気持ちを考え、盛り上がりをみせた80年代のイギリスの曲をどうやって料理しようかとか、リスナーの顔を浮かべつつ自宅でいろいろな曲に取り組んでいます。コンピュータのソフトにも慣れ、本当に楽しんでいます」
それでは、これまでの6年間でカヴァーした200曲中、元々のリリース年代と歌ったジャンルを分析し、南さんの選曲の特徴を探ってみよう。
リリース年代の1位は1960年代で36.4%、2位70年代27.2%、3位80年代7.5%、4位は50年代と90年代で7.0%。6位30年代 5.9%、7位40年代2.7%、以下1920年代、 2000年代、2010年代が同じく 2.1%だった。
ジャンル別では、1位はロック29.9%、2位ポップス22.4%、3位が歌謡曲12.8%、4位ジャズ9.6%、5位 R&B8.6%、6位フォーク5.9%、以下7位から13位までブルーズ、GS、セルフカヴァー、ボサノバ 、AOR 、 ニューミュージック、童謡、ヒップホップと続く。
これらの数値から見えてきたのは、1920年代から2010年代とおおよそ100年というスパンから選曲しているが、60年代、70年代が過半数を占め、ジャンル別では、かなり幅広いジャンルを取り上げているが、ロック、ポップス、歌謡曲が圧倒的に多いということであった。
そこで、カヴァーしたい曲、いい曲について聞いてみた。
「2週間で2曲をカヴァーするスケジュールなんだけど、聴いて『いいな』と思った曲って、歌ったときにこれが意外と難しんです(笑)。でもどこか“くる”ところがあるんだよね。やっぱり実際いい曲なんです、歌ってみると。
逆に『この曲嫌いだったよな』と思いつつ、『でも無茶苦茶流行ったな、それには何かきっとあるんだろう』と宿題にすることもある。これは何度も言っていることだけど、子どもの頃からスタンダードナンバーが好きで、オレにとっていい曲は、絶対に何十年でも残り、歌の上手い人は最後までいいって思っているから、楽曲だけじゃなくて、この曲はあの人に合っているとか、そういうところにこだわっているかもしれないね。
そして自分が好きな曲って、いちばん多感な頃に半端なく惹かれたものにどうしてもいってしまうよね」
さて、『ラジオな曲たち~NIGHT AND DAY~Ⅱ』、これまで6年間の200曲が凝縮されたアルバムになるが、今回はこんなエピソードがあった。
「真夏に制作がスタートしたので、自宅でボーカルダビングするときクーラーを止めないとノイズが入っちゃう。だから事前に部屋をギンギンに冷やしておいたんだけど、でもすぐに暑くなった(笑)。」
〈レディオソロイズム〉をはじめた頃は、ライブでのボサノバやジャズのレパートリーが増えていいなって思っていたけど、ライブの日程と重なったりしてスケジュール的に段々と重荷になって(笑)。でもパソコンのソフトで多重録音するようになってから、それまでとは別の世界がワーって広がったね。今回はそれをすごく実感しました。最初の頃は誰の言うことも聞かないぞ、自分で選んでやるぞと思っていたんだけど、でもスタッフというかみんなに曲のセレクションの判断を聞いたら全然違う意見もあった。でもこれで俯瞰で見ることができて、あらためてみたらアルバムのバランスが良くなった。だけど、真夏の自宅録音は避けたいよ(笑)」