「今週の一首」カテゴリーアーカイブ

今週の一首「ことばの時間」《2026年1月28日放送》

自作の短い詩を1つ

目覚めのリズム

朝の光が空っぽの胃袋を叩く

ぐぅ、となる。

ぼくの中の小さな目覚まし時計

昨日の後悔も、明日の不安も

とりあえず今は

朝飯をトーストにするか、ご飯にするか

で迷っている

まずは散歩をしてからと着替えをする

今日と言う真っ白なキャンバスに

最初の色を置いていこう

今週の一首「ことばの時間」《2026年1月21日放送》

短いエッセイを

タイトル「理性とアート脳」

子どものころ、テスト勉強をしている自分と、落書きに夢中になっている自分は別人のように思えた。

大人になってわかったのは、その二人はずっと同居していて、しかも意外と仲がいいということだ。

理性は道筋を引く。言葉をそろえ、数字を並べ、因果の骨組みをつくる。アート脳はその骨に色と体温を与える。

突拍子もない連想で壁を抜け、まだ名前のない感情に輪郭を与える。どちらが正しいかではない。良い問いはたいてい直感が見つけ、良い答えはたいてい論理が仕上げる。

「左脳か右脳か」という分け方は分かりやすいが、現実の私たちはもっと雑然としている。会議で数字を詰めている最中に、ふと一枚のスケッチが問題を解く鍵になることがあるし、感情の奔流の中から、驚くほど合理的な一手が浮かぶこともある。

脳は綱引きではなく合奏だ。ズレた音が重なる瞬間に、むしろ新しいリズムが生まれる。効率ばかりが称えられた時代は終わりつつある。

最短距離を駆け抜ける能力より、まだ地図にない場所へ道を引く力が価値を持ち始めた。

だからこそ、私たちは急がないことを学ぶ。直感が先に走ったら、理性に水を渡す。理性が迷い始めたら、アート脳に風景を描かせる。

結局のところ、人生の難題はどれも、計算だけでは解けず、感性だけでもほどけない。骨と血、設計図と落書き。両方を持っているのが人間の強みで、そのバランスが整ったとき、私たちはようやく自分の声で世界に触れられる。

 

今週の一首「ことばの時間」《2026年1月14日放送》

短いエッセイを

タイトル「厚着とTシャツ」

冬の街を歩いていると、ときどき不思議な並びに出会う。半袖の欧米人観光客の横で、日本人がマフラーを巻き、肩をすくめている。

あれは単なる気合いの差じゃない。体と暮らし、両方の積み重ねがつくる風景だ。体の話からしよう。欧米人は平均体温や筋肉量がやや高く、熱をつくって抱え込むのが得意だと言われる。

筋肉は小さな暖房機で、量が多いほど寒さに負けにくい。日本人は相対的に熱をため込みにくい傾向があるともされている。

次は暮らし。欧米の家やオフィスは冬でも暖房がよく効いていて、室内はぽかぽかだ。だから外に出るときも案外薄着で平気になる。

一方、日本の家は伝統的に断熱が弱く、家の中でも寒い。結果として、重ね着が日常になる。「冷え性」という言葉がここまで根づいているのも、日本ならではの感覚かも知れない。

つまり、寒さの感じ方は生まれつきと育ち、両方のスタンスで立っている。長く住む土地に体がなじみ、習慣がその感覚を補強する。その延長線上に、あの冬の光景がある。

半袖と厚手コートが同じ横断歩道に並ぶとき、そこには単なる我慢比べではなく、見えない体温と見えない生活の歴史がすれ違っているのかも知れない。