短いエッセイを
タイトル「理性とアート脳」
子どものころ、テスト勉強をしている自分と、落書きに夢中になっている自分は別人のように思えた。
大人になってわかったのは、その二人はずっと同居していて、しかも意外と仲がいいということだ。
理性は道筋を引く。言葉をそろえ、数字を並べ、因果の骨組みをつくる。アート脳はその骨に色と体温を与える。
突拍子もない連想で壁を抜け、まだ名前のない感情に輪郭を与える。どちらが正しいかではない。良い問いはたいてい直感が見つけ、良い答えはたいてい論理が仕上げる。
「左脳か右脳か」という分け方は分かりやすいが、現実の私たちはもっと雑然としている。会議で数字を詰めている最中に、ふと一枚のスケッチが問題を解く鍵になることがあるし、感情の奔流の中から、驚くほど合理的な一手が浮かぶこともある。
脳は綱引きではなく合奏だ。ズレた音が重なる瞬間に、むしろ新しいリズムが生まれる。効率ばかりが称えられた時代は終わりつつある。
最短距離を駆け抜ける能力より、まだ地図にない場所へ道を引く力が価値を持ち始めた。
だからこそ、私たちは急がないことを学ぶ。直感が先に走ったら、理性に水を渡す。理性が迷い始めたら、アート脳に風景を描かせる。
結局のところ、人生の難題はどれも、計算だけでは解けず、感性だけでもほどけない。骨と血、設計図と落書き。両方を持っているのが人間の強みで、そのバランスが整ったとき、私たちはようやく自分の声で世界に触れられる。